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2006年1月 9日 (月)

『キスの運び屋』

ロベルト・ピウミーニの『キスの運び屋』(長野徹訳、PHP研究所)を読んだ。

 不思議な味わいの本である。ピウミーニの本は同じ訳者で『光草』(小峰書店)が出ており、こちらは児童文学書として扱われている。

 『キスの運び屋』のほうはというと、漢字にふりがなが振ってあるので、子供が読めるようにという配慮は明らかにあるのだが、帯にもあるように、ショート・ショートとしても読める。星新一的味わいもある。いや、星新一とどこが異なるかを味読する楽しみもあると言えよう。

 「アルチバルド・ヴァカンツァ氏のニュース」は、ある日、まったくニュースが無くなってしまうので、自分たちで、身のまわりのことを報道するのだが・・・という話。

 いかにもイタリアらしいのは、「サウル親方の靴」と「聖トニオのお助け」。「サウル親方の靴」では、親方のもとに残忍な隊長が来て、三足の靴を作るよう依頼する。一足目は、サラマンカ征服のため。二足目はある王女の心を手にするため。三足目は、地獄の底を歩くため。親方は、三足とも作るのだが・・・。

 「聖トニオのお助け」は、ある曲芸師が綱渡りをしている最中にスズメがバランスをとる棒の端にとまって立ち往生する。聖人に祈るのだが、聖人の救急センターの当番が聖トニオで、この人、性格は良いのだが、有能とは言えなくて・・・。

 タイトルになっている「キスの運び屋」は、戦場にいる伯爵のもとへ、召使いが奥方さまのキスを運ぶという話ですが・・・。

 気軽に、想像の世界に遊んでみたい人におすすめです。

 

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