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2005年10月30日 (日)

「オベルト」日本初演

ヴェルディのオペラ「オベルト サン・ボニファーチョ伯爵」を初台の新国立劇場で観た。(10月29日)

中劇場で、入りは満員ではないが、かなり入っていた。テレビカメラが入っているので、テレビで放映するのか尋ねると、インターネットの放送なのだということ。確認のためスカパーではないのか、と聞くと、やはりインターネットの放送とのことであった。

さて、「オベルト」(以下、こう省略します)は、ヴェルディの処女作、日本初演というので、聞くことに決めたのだった。また、この次という機会があるかどうかも判らないので。

新国立劇場は、時々こういう出し物がある。つまり、いわゆるレパートリーに入っているものではなくて、めったに上演されないものをあえて出し物として選ぶということ、これには素直に拍手を送りたい。

曲自体は、面白かった。いかにも後のヴェルディを想起させる部分、特にバリトンのパートは、ヴェルディならではの表情の豊かさ、また陰影に富んでおり、歌手ロドリーゴ・エステヴェスも声もよく響き、演技もすっきりと適切で、気持ちよく聞けた。

部分的に、ベッリー二やドニゼッティを思わせる響きも聞かれる。話は、後述するが、復讐の要素を含んでおり、たとえば後の「運命の力」などだと、そういうところで、力のこもった、熱情的な、これまでのオペラでヴェルディしかなしえなかった感情表現が声、オーケストレーションでなされるのだが、そういった後のヴェルディであればもっと熱く展開されそうなところが、ベルカント調にのびのびと、悪くいえば、ちょっと間が抜けた風に歌われる。

しかし、オーケストレーションは後の「マクベス」を思わせるような早い激しいパッセージもあり、金管、ティンパニーの使用も結構派手だった。

オケは東京室内歌劇場管弦楽団、指揮はヴィート・クレメンテ。彼は、曲想の変化を、非常にドラマティックに振り分ける。激しい曲想に入る一瞬前に、ふっと息をはくような音がしたかと思うと、ズシンと足を踏みならす音が聞こえる。

かつてのシノーポリを思わせるところもある。一方で、非常にインテンポで、歌手に勝手に嫋々と歌わせることはなく、常にオケをコントロールしておきたいタイプと見受けられた。若いときのトスカニーニってこんな風であったろうか。

歌手は、バリトンのロドリーゴ・エステヴェスが出色。ヴェルディ・バリトンらしい響きと表情の深みがあり、落ち着いた演技とあいまって、別の演目でも期待できそうだ。

レオノーラ(ヴェルディのヒロインは処女作からレオノーラなのだと納得、「トロヴァトーレ」でも、「運命の力」でも、レオノーラという名前は何か特別の力を秘めているのだろうか)役の佐藤康子はきれいな声で、上だけでなく、かなり低い声もきれいに響くのでメゾかと思ったら、ソプラノとのこと。カンタービレな良さに、前半ではドラマティックな表情(復讐を誓うところ)が加われば、さらに良かっただろう。

テノールのマルチェッロ・ナルディスは、背が高く、堂々としている。やはり、舞台では容姿というのも、一つの重要な要素である。前半より後半のオベルトを殺してしまったという場面の歌唱が、演技もふくめ自然でよかった。前半やや緊張ぎみだったか。

クニーザ役の木村圭子は、手堅く歌っていた。御姫さまの役なのに、前半、婚礼の場面でもあまりに地味な衣装で、気の毒というか、もう少し華やかな衣装でもよかったのにとこれはもちろん、演出・衣装への注文。

ストーリー:オベルトの娘レオノーラは、政敵のリッカルドと恋に落ち、しかし棄てられてしまう。リッカルドは公女クニーザと結婚しようとしている。オベルト、レオノーラの父娘は、リッカルドに対する復讐を誓う。二人から事情を聞いたクニーザはレオノーラに同情する。

リッカルドは決闘を避けようとするが、オベルトは執拗に迫り、リッカルドはオベルトを殺してしまう。オベルトは罪を悔い逃亡する。レオノーラはその知らせを受け、父は自分が殺したのも同然と激しく悲しむ。

ちょっと、後の「運命の力」を思わせるところもありますね。

舞台は、装置はなくて、薄型テレビのリアプロを拡大したような感じで、舞台のうらから、教会や林の絵を巨大なスクリーン映し出すというものだった。

最初は新鮮な驚きがあったが、全部あれだと、ちょっと寂しい感じもする。集団が、スクリーンのうしろで影絵のように映し出されたり、決闘の場面も影絵で見せていたのは、優れた工夫だった。倒れたオベルトをレオノーラがかかえて、ピエタのポーズでしばらくきめていたのは、理解は出来たが、全体のなかでどういう意味づけを狙っているのかは、よくわからなかった。

全体として、レベルの高い上演で、非常に満足が出来たが、これは、イタリアのスポレート実験歌劇場との共同制作公演で、そのためイタリアで上演のときに、相当な時間をかけて演技や舞台をつくっていったことが功を奏しているのではないかと思った。

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